【むじゅん】 はきもの屋と、賞金稼ぎたちによって 孤児院は、完全に包囲されていた。 僕を退治して、せかいの王になるつもりらしい。
はきもの屋は、僕以上の強い意志で、 せかいの王になろうとしているのかも知れない。
でも、悪意を持つキミの 好き勝手にはさせないよ。
【はきもの屋】 闇に乗じた混戦、 孤児院の者たちを人質に取る…。 むじゅんは、非常に強力な風を自在に操る。 その弱点は、混戦。 風が強力過ぎる為、味方も巻き込んでしまうからだ。 よって混戦を強いれば 恐るるに足らず。 加えて、むじゅん退治と見せかけ 孤児院の者たちをノーマークにさせ 人質に取った。
(これは、直前まで爆弾屋たちに知らされていなかった。 味方にも真実を隠す、冷酷な性格をあらわしている)
孤児院の者たちを人質に取ることで「服従のブレスレット」を付けなくても、俺の言いなりだ。
まだ生かしてやるさ。
お前には、やってもらう事があるんでね。
これは魔法グッズ「スリープボム」だ。 効果は、対象者を1日眠らせる。 2日後に廃坑の街で 「せかいの王誕生祭」を行う。 お前にも出席してもらうのさ。 せかいの王が誕生する瞬間を目にするが良い。
「きかいのくに」「そらのくに」は手に入らなかったが これで晴れてせかいの王だ。
くくく。
はーっはっはっはっは!!
深夜の戦いで、孤児院は焼失し、 孤児院のヒトたちも人質にとられ、 むじゅんさんも 捕獲されてしまった。 戦いを終えた魔法使い、クリム、爆弾屋は 廃坑の街の茶屋で一息ついていた。
所変わって 「廃坑の街」のとある場所…
ここでは、むじゅんを支持する者たちが
はきもの屋を善意に目覚めさせ、 むじゅんたちを救う方法を考えていた。
魔女と魔竜は見学でここへ来ていたんだ。
しかし、どんなに良い案を実行しても はきもの屋を善意に目覚めさせる事が出来なくて。 会議は重たい空気に包まれていた。
その後、 はきもの屋のもとには名も無き花が、山の様に届いた。 むじゅん支持者からのいやがらせか、はきもの屋へのお祝いなのかは、はっきりと分からなかった。
その後、はきもの屋は全てのお花を 生花店に売り払ってしまったそうだ。
【爆弾屋】 はきもの屋さんに付けられた魔法グッズ「服従のブレスレット」の 解除法を、魔女さんは、快く教えてくれました。
私とファミリーは、はきもの屋さんが寝静まった頃、 雇い主さんが囚われている「最下層の屋敷」へと向かいます。
そして、無事にブレスレットを外すことが出来ました。
解除法とは、心から忠誠を尽くすヒトから ブレスレットを外してもらう事だったのです。
雇い主さんは、はきもの屋さんを退治する事を望まず 明日行われる「せかいの王誕生祭」に 出席する気のようでした。
雇い主さん、 あなたがはきもの屋さんと争う気が無いのなら それに従いましょう。
とうとう「せかいの王誕生祭」当日となり 会場である、廃坑の街のブラックマーケットには さかさのくに、そらのくにの人々が一斉に集まりました。
中には、どのくにから来たのか分からない様な者までいます。
そして唯一、きかいのくにだけが この祭りに参加しませんでした。
彼らは、せかいに関心が無いのです。
はきもの屋さんがせかいの王になる事を喜ばなかったのは 雇い主さん率いる孤児院の者たちだけでした。
はきもの屋さんが廃坑の街の王になってからは、 街の貧困は消えつつあります。
さらに、貧困の最下層にいた彼が せかいの王にのし上がった武勇伝は、 人々に大きな希望を与えました。
彼は確かに、せかいの王になる実力を持つ者だと 人々の間で言われ始めていたのです。
「争いを起こすな」と雇い主さんから言われていた私は、 この祭りをただ眺めているだけでした。
こうして 複数の王で分断され、歪められていたせかいが 何百年ぶりに再びひとりの王によって 治められるのでした。
誕生祭が終わり、 雇い主さんと人質に取られていた孤児院の皆さん、 そして私たちは、解放されるのでした。
これからやるべき事を命じて下さい、雇い主さん。
これからは戦うな、というのですね。
…仰せのままに。 戦わずとも、あなたを このいのちに代えても守ってみせましょう。
罪の代行をしながら生きてきた爆弾屋。 戦いを止め、武器を捨ることを命じられた。
それが幸せに繋がるかどうかは、まだ分からなかった。
悪意を持つ、はきもの屋がせかいの王になった事で、 むじゅんは焦り始めていた。
その焦りから、せかいの神になる事を決心したんだ。 その決心がのちのち 「かがやくもの」に悪影響を及ぼすとはまだ誰も知らなかった。
そして「せかいのあな」では。 ぼくの家に置いていったぬいぐるみ「旅の終わりを示すもの」がエコバンスと一緒に「かがやくもの」のようすを眺めていた。
「旅の終わりを示すもの」は彼なりの方法でせかいを救いたい、そう思っているんだ。
そのころ、けものは灯台樹の内部まで来ていた。 灯台樹が泣いていることなんて、いつものことだし、誰も気にもとめてなかった。
でも、けものは灯台樹に話しかけたんだ。 灯台樹は話が出来るかも分からないのに。
【灯台樹】 私は「かがやくもの」最大のいきもので 毎日なみだを流しています。
そのなみだは「おひさま」と呼ばれ、 かがやくものを、いのちあるものを照らしています。
ですが成長を続けている事で過去の自分を忘れてしまいました。
かなしくて私は、なみだを流し続けています。
せかいが「救い」で溢れた時…
私が泣くのをやめた時。すこし笑い始めた時
せかいは「永遠の夜」に閉ざされるでしょう。
それでも、笑顔で生きぬきたいと思うのです。
そう言って灯台樹が笑おうとした時 金色の鎖がけものめがけて追ってきた。
この鎖に捕まったらいけない気がして
けものは逃げ出した。
【けもの】 僕はかがやくもので生きていたい。 風に戻りたくないよ。
いま、失っていた記憶が、よみがえる。 僕は、「せかいのあな」で暮らしていた 風だった。
風だった頃の記憶と、今の記憶を手に入れた時
真の姿になった。 僕は鎖から逃げる、逃げる。
しかし僕は鎖に捕らわれ かがやくもので生きていた記憶を失って 「せかいのあな」へ送られてしまった。
全ての風が魔法を運ぶ風に戻ってから数日後、 むじゅんと爆弾屋たちは「せかいのあな」へ向かっていた。
はきもの屋がせかいの王になったことで焦っていたむじゅん。
廃坑の街の街人たちから「神様」と呼ばれていた彼は
本当の「せかいの神」になろうとしていたんだ。
そして自分を育ててくれた風たちに感謝の気持ちを伝える為に。
【むじゅん】 ここが故郷…「せかいのあな」。 僕はここで生まれ、 小さい頃、暮らしてた。
ここには「かがやくもの」には無いものがある。 それは…
キミが育ての親。
キミが名づけの親。
キミが教育の親。
姿は見えないけれど 「かがやくもの」に居る間も 風たちは傍にいてくれた。
僕を育て、ココロ埋めてくれたのは いつでもキミたちだった。
今回は、別の用があって、急きょ訪れたんだ。
「せかいのあな」の最高責任者と話がしたい。
それと その足に付けられた鎖…。 風たちは辛そうに見えるんだ。 外すよう、最高責任者に伝えておく。
僕らは、最高責任者である 「旅の終わりを示す者」の部屋まで案内してもらった。
せかいの神になりたいんだ。 いいかい? 「せかいのあな」最高責任者の 承諾を取った方が良いと思って。
あっけなく、神になる承諾を貰った。
風の鎖は、自らの意思で 断ち切るものらしい。
悲しみが「かがやくもの」を支えているんだね。
そして、全ての風が鎖を断ち切ったら、 「かがやくもの」は終わってしまうんだね。
僕はせかいの全てのいきものに、 キミにも、救いを与えるよ。 争いも悲しみも無いせかいに変えるよ。
「かがやくもの」を終わらせたりなんてしない。
僕たちは、風の元へ戻った。
風の皆、聞きたまえ!
僕は、せかいの神になった。 キミたちの繋がれた鎖を外す方法も分かった。
自らの意思で、断ち切るんだ。
今までは「プラネタリウム」を介して、外していた。 でもそれは、 本当に鎖を外した事になっていなかった。 外してもらうのではなく
自らの意思で、断ち切るんだ!
なみだを流していた灯台樹は、 けものに「泣かないで」と、笑って見せた。 同時に、そらは みるみるうちに暗くなっていった。
せかいの終わり「永遠の夜」。
何百年ぶりの せかいにひとりだけの王、 「はきもの屋」。 せかいの神、
「むじゅん」。 鎖を断ち切り、いなくなった、 「風」たち。
そして 永遠の夜が訪れ、終わってしまった、 「かがやくもの」。
これが、「救いあるせかい」……?
ここで 「旅のノート」と「気ままなノート」… 分かれていた物語がひとつになる。
くらいくらい永遠の夜の中で まばゆくかがやくノートが一冊 闇を越えて現れた。
「最後のノート」。 そのノートは、開かれた。
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