ぼくの てのひらに あるもの
第0話 「 導入 」
■三冊のノート
ぼくは「しんかい」でひとりぼっち。
でも三冊のノートがいつもそばにいてくれたから、
寂しくなんかなかった。 そのノートは、「かがやくもの」という世界で生きるいきもの達の旅記録だった。 今日も三冊のノートを書斎で読みふけて。夜はふけていく。
誰かが書き記したノートが一冊。 「旅のノート」。
それは記憶の無い不思議ないきものが「かがやくもの」で旅するおはなし。
どうして出会いがあるのかなぁ。どうして別れがあるのかなぁ。
誰かが書き記したノートが一冊。 「気ままなノート」。
それは善悪の狭間で生きる賞金稼ぎが賞金首「むじゅん」を捕獲する為に旅するおはなし。
どんなことをしても、じぶんが善だと信じながら生きてた。
誰かが書き記したノートが一冊。 「忘れられたノート」。
それは誰にも読まれないように、しっかり鍵が掛ってる。
「旅のノート」「気ままなノート」この二冊のノートが交錯しておはなしは進んでいく。
■おはなしのはじまり
今日も、いつものように三冊のノートを読みふけていると
一通の手紙がノートに挟まれている事に気づいた。
なんだろう、開けてみたら
手紙にはうつくしい文字でこう書かれていた。
「しあわせに、なってください」
それだけが書かれている。差出人名も宛て名もない。
ぼくは汚い字で、でもとても丁寧に その文章の頭に文章をこう付けくわえた。
「せかいのすべてのいきものへ」
いままで一人の世界が当たり前だったぼくだけれど
手紙を読んだ後、ひとりぼっちでいることが無性にかなしくなって
ぼくはこの場所を出て「かがやくもの」で生きようと決めたんだ。
旅支度をしながら、「かがやくもの」を想う。
■かがやくもの
空と海があるせかい
空には 大陸があった
たくさんのいきものが 住んでいた
空と海の間には 街があった
街の子どもたちが 住んでいた
海には 家があった
ぼくひとりだけが 住んでいた
昔 海に沈んだ植物のタネは
空を見るために
長い時間をかけて 大きくなっていった
このせかいは
上へ上へ 大きくなっていく
ココロも姿も すこしずつ
別のものから 別のものへ
|
|
|