せかいのあな

 
かがやくものに空いた、穴。
穴の中には、街がある。
街は植物のように、空へ空へと成長を続けている。
波の音が聞こえている。

ここにいる、いきもの
「部品たち」
 
…街が成長をするために生んだ、子ども。
非常に沢山いて、「部品」と呼ばれている。
風を繋いでいる鎖を作ったり、街の修復を行なったりと
オールマイティに活躍している。

「灯台樹」
 
…せかいで最もおおきないきもの。
植物の種からうまれた。
自分が植物だったことを忘れ
ただただ成長を続け
一日の終わりに一度だけ、涙を流していたが
救いあるせかいに生まれ変わってからは笑うようになった。

「おひさま」
 
…灯台樹が流したなみだ。
かがやくもの、せかいのあなを通過し
しんかいに沈み、光のあぶくとなって散る。

スポット

「終点・そらの駅」
…街の最上部にある、駅の終点。
ここで、列車の旅は終わる。
駅といっても、たったひとりの駅員が佇んでいるだけ。
何も無い場所。
 
ここにいる、いきもの
「そらの駅員」
 
…「終点・そらの駅」の、駅員。
頭が取れている為、喋る事が出来ない機械。
頭が取れて、親との思い出も記憶も、全て失ってしまった。
部品たちに頼めば、頭を作り直してくれる。
でも彼は、望まなかった。
失ったものの代わりを求めるより
失って始まるものを、大事にしている。
 
風たちが育てた名もなき花を毎朝飾ってくれていた。

「風たち」
 
…「終点・そらの駅」にしかいない、鎖に繋がれたいきもの。
街が成長する過程で生まれた廃棄物を
外に捨てるために、風は存在している。
廃棄物を、かがやくものに捨てているが
かがやくものの人々は「魔法」と呼び、とても大切にしている。
 
むじゅんを産み育てた親。
むじゅんに再会し、鎖から解放され、すべての風はいなくなった。

「最後の古い風」
 
…「風」のひとり。
風をやめてしまった、けもののことをとても心配していた。
周りの風たちが、かがやくものに魔法を運ぶことをやめていく中
最後まで魔法を運んでいた。
 
むじゅんに再会し、鎖から解放され、どこかへと消える。